株式会社フラクタリストを退職しました

実際に面識のある方の多くには既にお伝えしましたが、2010年11月末付で株式会社フラクタリストを退職しました。


このブログはあくまで個人的なものなのでこれまで明示的にブログ上では書いていませんでしたが、私は株式会社フラクタリストの創業期から従事してきたエンジニアでした。


私が創業メンバーであった友人の誘いで入社したのは2001年11月でした。気がつくと足がけ9年を数えていました。


創業当時はモバイル向けの受託開発全般を事業ドメインとしていました。当時は前職にてC/C++やPerl5の経験はあったものの、Apacheのセットアップすら未経験、RDBMSPHPすら何それおいしいの状態でした。


それでも9年という年月とベンチャーという環境は私に様々なスキルを身につけさせてくれました。当初の6年間は受託開発事業に従事していましたが、パッケージソフトの開発やiアプリやBREWなどの端末アプリの開発、公式課金サイトの構築などその時々によって得られた経験は何事にも代え難いものがあります。それは言語やプラットフォーム自体の開発ノウハウというよりもむしろ、キャッチアップすること自体、つまりスキルのスクラップ&ビルドを常に繰り返すことがいかに大事かということを体で認識したことが極めて貴重な経験でした。


またその中で実際のプログラマからマネージメントというポジションまで従事するようになったことも自身の中で非常に重要な経験でした。この中ではどれだけ「失敗」してきたかしれません。思い出したくないようないわゆる黒歴史もたくさんあります。ですがその失敗がないと今の自分はないと思うしその失敗を許容して頂いた顧客、同僚などの環境にも感謝しきりです。


2006年、フラクタリスト名証セントレックス市場に上場を果たしました。しかしその後業績が振るわずngi groupの子会社であるngi mobileと合併しています


この頃、自身の中では「受託開発ではなく自社サービスの開発をしたい!」と強く思うようになっていました。当時ngi mobileの主体事業は広告代理事業でしたが、合わせてモバイルメディア事業を展開していました。そこでどうしても自社サービスに従事したい!と事業部に直訴し、自社サービス事業開発に携わるようになりました。


メディア事業というのはそれまで自分が思い描いていた自社サービス開発とは全く異なるものでした。「マーケティング」についての自身の視点が180度変わったのもこの頃です。広告やマーケティングに関わる機会があったのは非常に幸運だったと今でも思います。


その後このモバイルメディア事業も思ったように振るわず、その後「アドネットワーク事業」に転換しました。こうして生まれた自社サービスが「AD-STA」です。


アドネットワーク事業のサービスは固定費を極力抑制したインフラの構築や高速な配信エンジンの開発、運用業務を考慮したユーザビリティをそなえた画面設計など、非常にエキサイティングなものでした*1。また、エンジニア視点からの戦略計画への参画をさせてもらえたことが非常に大きかったです。サービスはプロデューサーや企画担当に任せず、エンジニアとしても冷静に見ると全く違った視点での提言ができるということに気づきました。


こうして振り返ると、自身は環境や同僚、タイミングに非常に恵まれていたのだと感謝しています。

退職のきっかけ

AD-STAはサービスとしても着実に拡大し、成熟期を迎えようとしていました。しかしその一方で以下のような思いが自身の中に湧くようになってきました。

  • このままこのサービスの拡大を見届けても、イノベーティブな変化を起こせるのだろうか?
  • 社内では自身が社内技術トップとされているが、自身のレベル程度でトップ扱いされても良いのか?所詮井の中の蛙ではないのか?
  • 同じく、自身が社内技術トップなら、自身が他のドメインに軸足を移すことは今後許され難いのではないか?


この頃、 id:naoya の「退職のお知らせ - naoyaのはてなダイアリー」や id:secondlife の「はてな退職しました - 川o・-・)<2nd life」エントリを目にし、非常に自身の心境に酷似していたことを覚えています。


特に今年の後半からはその思いを強くしていきました。そのまま社内で経営レベルに口出しできる存在を目指すのか、自身で独立起業を模索するのか、それとも新天地を目指すのか…


ところが不思議なもので、そのように考えているといろんな人と出会う機会を数多くいただきました。特に6月以降、CTO48というイベントに登壇したことや、他にも勉強会に参加するなどしたのをきっかけに、さまざまな人にお会いすることとなりました。


その中で次の環境につながるご縁をいただき、退職にいたることになりました。今考えても、今年の後半はまさに転機だったのだなあと思います*2

今後について

今後もガラケースマートフォンを中心としたモバイル業界に引き続き身を置く予定ですが、今後は以下の2点に意識していきたいと考えています。

  • 自身の開発経験/マネージメント経験を基本としてビジネス面にも踏み込んでいくこと
  • 国内だけでなくグローバルな視点でも事業に関わっていくこと

最後になりましたが、これまでお世話になった多数の方々には、今後とも変わらずご指導ご鞭撻いただけますと大変幸いです。よろしくお願いいたします!

*1:この点については id:yamaz の「広告システムエンジニアは絶対におもしろいと思う理由 - 最速配信研究会」のエントリが自身でも心底腹に落ちたエントリでした。

*2:「今回の退職はフラクタリストがngi groupに吸収合併されることと関係あるのか」という質問を多数いただいたのですが全く関係ありませんw。むしろこのニュースリリースの日まで全く知らなかった